<$BlogRSDUrl$>
〜科学にロマンを、ロマンに科学を SFと科学の接点を探求する〜

2004/03/16

太陽系に冥王星以来最大の天体を発見 

<天文学> カリフォルニア工科大学の研究チームが、太陽系の中で冥王星より外側を回る天体を新たに発見しました。この天体は暫定的に、イヌイット(エスキモー)神話の海の女神にちなんで、「セドナ」と命名されました。一部では、「太陽系第10惑星」の発見とも報じられていますが、NASAの発表では、あくまで「惑星に似た天体」としか表現されていません。
 セドナは地球から約130億キロの距離にあり、冥王星の約3倍の軌道を回っています。他に特筆すべき点は、その色と大きさです。セドナは、太陽系の中で火星の次に赤い天体であり、冥王星の約3分の4の大きさであると推定されています。太陽系の天体としては、1930年に発見された冥王星以来、最大の大きさとなります。
 セドナは太陽から極めて離れているため、その地域の温度は決して-240℃を超えることがありません。セドナは、約1万年に一度しか太陽に近づかず、最も遠い位置にあるときは太陽から1300億キロの距離にあるため、その表面温度はさらに低いと考えられます。
 ところで今回の発見は、長い間仮説であった「オールト雲」(または「オールトの雲」)の発見かもしれないと考えられています。オールト雲とは、彗星の源と考えられている、小さな氷の天体が集まっている地帯のことです。惑星圏の外側に、太陽を取り巻くように球状に広がっていると推測されており、「彗星の巣」とも呼ばれます。
 セドナの軌道は、かつて天文学者が見たことのないような楕円形で、オールト雲仮説で予測される天体に似ているそうです。
 セドナは今後72年間に渡って地球に接近してきます。前回、セドナが地球を訪れたときは、地球は最終氷河期がようやく終わるところでした。果たして次回、セドナが地球を訪れるときには、地球の環境はどうなっているのでしょうか。

(2004/04/02 追記)
 DSPACEではセドナが第10惑星になれない理由を詳しく解説しています。興味のある方はご覧ください。





2004/03/15

太古の火星には生命の誕生に十分な水があった 

<惑星探査> 米航空宇宙局(NASA)の科学者チームは、無人探査車「オポチュニティー」が、火星上にかつて生命を支えるのに十分なほどの水が存在していた証拠を発見したと発表しました。無人探査車の着陸から間もない時期の発見としては、非常に大きな成果です。
 NASAの科学者チームは、オポチュニティーが着陸した地域はかつて、表面が液体の水ですっかり覆われていたと考えています。これを、NASAの科学者は、「メリディアニ平原(オポチュニティーの着陸地点)は過去に『ずぶぬれ』の時期があった」と表現しました。
 言い換えれば、この地域は生命が存在できる良好な環境だったということができます。なぜならば、地球型生命の誕生には液体の水という要素が不可欠だと考えられているからです。ただし、現在のところ、生命の存在につながる直接的な痕跡は見つかっていません。
 さて、具体的な成果の詳細をご説明しましょう。
 オポチュニティーが岩石の化学分析を実施したところ、岩石には多量の硫酸塩が含まれていることがわかりました。また、同じ場所で酸化鉄の硫酸塩である「ジャロサイト」という鉱物も検出されました。
 硫酸塩のように大量の塩分を含む岩石は、地球上では、水の中か、長い間水にさらされる環境で作られます。さらに、ジャロサイトが見つかったことは、このあたりが酸性の湖か温泉のような環境であったことを示しています。
 加えて、オポチュニティーが徹底的に調査した「エル・キャピタン」と呼ばれる岩石からは、水があった証拠と思われる3つの特徴が見つかりました。すなわち、岩石の中に存在する小空洞、小球体、そして斜層理です。
 岩石からは、あちこちに長さ約1センチメートルの小空洞が見つかりました。このような小空洞が形成されるのは、塩水中にある岩石の中に無機塩類の結晶ができるときです。その後、結晶が侵食されるか溶けるかしてなくなってしまうと、岩石の中に空洞が残るのです。
 同じ岩石からは、NASAの発表によると「BB弾ほどの大きさ」(直径約4.5ミリ)の、小球体と呼ばれる粒子も見つかりました。このような小球体は、地球上においては水に溶けた鉱物が穴だらけの岩石の中で堆積するか、隕石の衝撃や火山活動によって溶けた鉱物のしぶきが、冷えて固まることで形成されます。
 さらに、この岩石には、斜層理と呼ばれる地層が見つかりました。科学者チームは、これは水や風の動きによって形成されるものだとしています。
 これらの細かい証拠を総合した結果、NASAの科学者チームは、太古の火星に液体の水が豊富に存在したことを突き止めました。これは今回のミッションの主目的でもあります。
 こうなると、次の目標は火星に生命が存在した証拠の探索です。今回の発見により、かつて火星に生命が存在した可能性は飛躍的に高まりました。
 地球上に生命が誕生したのは、地球が誕生してから間もない約8億年後(現在から約38億年前)とされています。かつて火星に水が存在したのであれば、その時期に生命が誕生していた可能性は十分にあります。
 そして、一度誕生して進化を遂げた生命は、簡単には滅びません。さすがに知的生命体(いわゆる火星人)は難しいとしても、太古の火星生命の末裔が、地下で今も生き続けている可能性は否定できないのです。
 最後に、地球外生命を探す意義について一言書いておきましょう。我々以外の生命を探し出すことは、我々自身を良く知ることにつながります。
 例えば、日本の文化と海外の文化を比較することによって、互いの文化をより良く知ろうとする学問があります。いわゆる「比較文化論」と呼ばれるものです。
 地球生命と地球外生命を比較することができるようになれば、お互いの進化の過程、生化学的プロセス、遺伝や代謝の方法など、生命活動を支える仕組みの共通する点と異なる点が明確になり、生物学が各分野で発展して、「比較生命学」が誕生するでしょう。
 そして地球外生命の発見は、この宇宙にどれくらい普遍的に生命が存在するかを知ることにもつながります。それは、地球外知的生命体の存在を探求することでもあるのです。

(2004/03/24 追記)
 NASAの発表によれば、探査車オポチュニティーが着陸した地点は、かつて塩分を含んだ地球型の海の沿岸部だったことが判明したそうです。この発見により、太古の火星に生命が存在した可能性がさらに高まりました。
 この発見は、「アッパー・デルズ」と名付けられた砂岩層の特徴に基づくものです。この砂岩層からは、塩素や高濃度の臭素といった、乾燥地帯の塩水湖のような環境を示唆する成分が検出されました。また、この層には斜層理と呼ばれる地層の構造とともに、さざなみの痕跡を示す模様があり、水深5センチメートル以上、流速毎秒10〜50センチメートルという、海底の環境で堆積したものと見られています。
 なお、NASAは2009年に再び高度な探査車を、2013年には岩石や土壌を地球に持ち帰るロボット搭載探査機を火星に送る計画があることも明らかにしました。





2004/02/15

目と耳のもとは同じ 

<生物学> ショウジョウバエの目や耳は同じ原始的な感覚器が分化してできたことを、国立遺伝学研究所の研究チームが実験で確かめました。これまでは、目などの感覚器官は、それぞれ独自の進化過程を経てきたと考えられていました。
 研究チームは、遺伝子を操作したショウジョウバエで実験を行い、感覚器が形成されるのは発生過程の特定の時期に、必要な2つのタンパク質が存在する場合であることを、突き止めました。
 条件を満たした時にだけatonalという遺伝子が働き、この遺伝子がないと、目、耳、脚の角度を感知する伸展受容器という部分が形成されませんでした。atonalはこれらの感覚器に共通する細胞を発生させ、目の場合はその後、eyelessという遺伝子が目を作る指示をするらしいことが判明しました。
 脊椎動物にもこの2つと同様の遺伝子があることから、研究チームは、人間でも同じことが起きている可能性があると考えています。



2004/02/14

さらばハッブル宇宙望遠鏡 

<天文学・科学政策> 米航空宇宙局(NASA)によると、かつて天文学者や宇宙飛行士に「宇宙一の望遠鏡」と呼ばれ、宇宙の膨張を提唱した科学者の名前を冠した、「ハッブル宇宙望遠鏡」は、早ければ2007年にもその役目を終えることが決定されました。
 ハッブル望遠鏡の存続を願う人々は、この老朽化した望遠鏡の補修を行なうよう求めてきました。しかしNASAは、ブッシュ政権の方針に従い、宇宙開発のための資源を月や火星への有人飛行に振り向けることにしました。ブッシュ政権の宇宙計画については、2004/01/09の記事「米国が月面基地建設・有人火星探査を計画」をご覧ください。
 ハッブル望遠鏡は今後数年で徐々に老朽化が進み、おのずと大気圏に突入することになります。その間も写真撮影は継続しますが、それもバッテリー、ハードウェアのヒーター、平衡状態を保つためのジャイロスコープのうちのどれかが動かなくなるまでのことです。
 ハッブル望遠鏡は、1962年に構想が浮上し、1985年に完成しました。しかし、1986年にスペースシャトル「チャレンジャー」の爆発事故が起きたために、打ち上げは1990年まで延期されました。
 15億ドルの費用をかけて、ようやく地球の軌道に乗ったハッブル望遠鏡でしたが、当時の最先端技術が使われていたにも関わらず、すぐにハードウェアのトラブルに見舞われました。この不具合は、3年後のスペースシャトル「エンデバー」の打ち上げにより、ようやく修正されました。
 補修後のハッブル望遠鏡から送られる画像は、地球の大気に邪魔される地上の望遠鏡から撮影したものを、はるかに凌いでいました。長年にわたって、ハッブル望遠鏡は、科学的に比類のない実に興味深い画像を送ってきました。さらに、宇宙に関するいくつもの大きな謎の解明においても重要な役割を担ってきました。
 1994年には、超巨大ブラックホールが存在する証拠を発表し、議論を巻き起こしました。1999年には、科学者たちがハッブル望遠鏡からのデータに基づき、宇宙の年齢を120億〜140億年と推定しました。今年の2月には、この望遠鏡のデータから、太陽系外惑星の大気中に酸素と炭素の存在が確認されたばかりです。詳しくは2004/02/03の記事「太陽系外で初めて酸素と炭素を持つ惑星を発見」をご覧ください。
 ハッブル望遠鏡の後継となる新宇宙望遠鏡としては赤外線カメラを搭載した「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」が、2011年に打ち上げを予定されています。

(2004/03/12 追記)
 ハッブル宇宙望遠鏡が、ビッグバンから4-8億年後の超深宇宙の銀河の姿を初めてとらえました。これは、従来の観測成果に比べて、我々の宇宙の歴史を数億年もさかのぼったものです。





2004/02/11

人間の体細胞から万能細胞を作成 クローン人間、実現に近づく 

<生物工学・科学倫理> ソウル大学などの研究チームが、人間のクローン胚(ヒトクローン胚)を使い、体を構成するあらゆる細胞になる能力を持つことから「万能細胞」とも呼ばれる胚性幹細胞(ES細胞)を作成することに成功しました。体細胞からのES細胞の作成は、マウスや牛などでは成功していましたが、人間を含む霊長類では技術的に難しいとされてきました。
 研究グループは、理論的には遺伝的に同一であるために、拒絶反応の起きない移植用の細胞や組織を作れることになることから、パーキンソン病のような脳神経疾患や、脊髄損傷、糖尿病などの再生医療につながるとしています。再生医療に関しては2003/12/15の記事「あごの骨から歯を再生 進歩著しい再生医療」をご覧ください。
 しかし、今回の研究はクローン人間づくりにつながる技術を利用しているため、生命倫理をめぐる議論を招くことは必至です。
 研究グループは、同意を得た16人の女性から242個の卵母細胞(卵子の元となる細胞)の提供を受け、このうち176個の卵母細胞の核を取り除いて、卵母細胞と同じ人間の体細胞を移植し、クローン胚(胎児の元となる細胞)を作成しました。
 このうち30個が、子宮に着床できる胚盤胞と呼ばれる段階まで分裂が進みました。さらに、その中の20個から内部細胞塊を採取して培養し、最終的に1株のES細胞を作成することに成功しました。このES細胞をマウスに移植したところ、神経や筋肉などの様々な細胞に分化(あらゆる細胞になる能力を持つES細胞が、特定の種類の細胞に変化すること)することが、確認されました。
 ヒトクローン胚の作成は2001年に米国のベンチャー企業も成功を報告していますが、胚の分裂は初期の段階で止まっており、子宮に着床できる段階にまで成長したのは今回が初めてです。なお、クローン技術を使わず、体細胞の代わりに受精卵をもとにした人間のES細胞の作成には、様々な研究チームがすでに成功しています。
 原理的には、クローン化に使用する体細胞は皮膚などでも構いませんが、今回は成功率を上げるために卵巣にある卵丘細胞という細胞が使われました。それでも242個の卵子から、たった1個のES細胞しか作れなかったわけで、治療への応用のためには技術的にもES細胞作成の成功率を、さらに上げる必要があります。また、狙ったとおりの細胞に十分に分化していない細胞を移植するとガン化する恐れがあり、ES細胞を狙ったとおりに確実に分化させる技術も不可欠です。
 さらに重要な点は、今回のヒトクローン胚を女性の子宮に戻して育てれば、クローン人間の誕生につながる可能性があることです。ヒトクローン胚の作成は、日本では法律によって禁止されていますが、韓国では昨年末に、クローン人間づくりを禁止する生命倫理法が成立したものの、難病などの医療研究目的に限って、ヒトクローン胚の作成が認められています。
 また、日本もクローン技術規正法の指針で、クローン胚づくりは当面禁止としていますが、政府の総合科学技術会議における生命倫理専門調査会の2年半に及ぶ検討の中でも、解禁派と慎重派の意見は平行線のままで、昨年末の中間報告(PDF形式)では異例の両論併記となりました。
 米国ではブッシュ大統領が2001年8月、連邦政府の研究資金を受けている研究者に対して新たなES細胞株を作ることを禁じ、それ以前に作られた、限られた数の株しか使わせないと発表した経緯があります。米国の研究者たちは、この大統領命令が、国内のES細胞研究の発展にとって、大きな制約を課したと考えています。
 国連では、クローン人間禁止条約の制定作業を進めてきましたが、医療研究を目的としてヒトクローン胚の作成を認めるかどうかで各国の意見が分かれ、昨年末から交渉が1年の間凍結されている状態です。一連の経緯とわたしのクローン人間に対する考え方に関しては、2003/11/09の記事「クローン人間禁止条約が採決先送りに」をご覧ください。
 このように、いよいよクローン人間の誕生が秒読み段階まで迫ってきました。この期に及んでは、クローン人間の作成を禁止するだけではなく、実際にクローン人間が生まれたときに、その人間の基本的人権が守られる社会制度作りを進めていくべきだと考えます。
 本来ならば、クローン羊のドリーが誕生したときから手をつけているべきだったのですが。

(2004/02/15 追記)
 国産のヒトES細胞を使った研究計画が文部科学省の専門委員会で承認されたことを受け、ES細胞を作成した京都大学再生医科学研究所は、早ければ3月中に国内初のヒトES細胞の分配が行われる、との見通しを示しました。なお、このES細胞は体細胞由来のクローンではありません。
 これまで研究していたオーストラリアからの輸入ES細胞に加えて、今回は、米国からの輸入細胞の研究も承認されました。ES細胞には人種差や個体差などがあるため、1種の細胞では分からなかった条件比較ができれば、研究の発展に非常に意味があると期待されています。

(2004/02/16 追記)
 政府の総合科学技術会議生命倫理専門調査会シンポジウムが開かれ、約220人が参加しました。会場からは、「脊髄損傷で寝たきりの家族がいる。胚の研究に期待し、自分の足で立つことを夢見ている」と訴える声や、「卵子を提供する女性側の意見を聞いていない」との批判があったそうです。







最新の記事へ   過去の記事へ