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〜科学にロマンを、ロマンに科学を SFと科学の接点を探求する〜

2003/11/29

国際宇宙ステーションで謎の衝撃音 原因は不明 

<宇宙開発> 米航空宇宙局(NASA)は、現在建設中の国際宇宙ステーションで、金属が曲がるような衝撃音を米露の搭乗員2人が聞いていたことを明らかにしました。同搭乗員は、「ロシア製の居住棟の後方から、金属缶を押しつぶすような音が約1秒間続くのを聞いた」と、地上の管制室に報告。早速、ロボット・アーム・カメラで外観を撮影しましたが、外部に損傷などはなく、今のところ機能にも異常はないとのことです。
 当初は原因として、宇宙ゴミ(スペース・デブリ)が衝突したのではないかと疑われました。宇宙ゴミとは、放棄された人工衛星やロケットなどの残骸・破片が、そのまま高速で軌道上を漂っているもののことです。しかし、NASAは外側に衝突痕が見られないとして、この考えを否定しました。他に、内部の機器類のトラブルで音が発生したのではないかとも推測されていますが、はっきりした原因は今のところ不明です。
 これがSFでしたら、このあと宇宙生命体が宇宙ステーションに侵入して、搭乗員との間で死闘が繰り広げられるところですが、残念ながら今回そういうことはなさそうです。
 機器類のトラブル説の根拠として挙げられているのは、宇宙ステーションの老朽化です。そもそもこの国際宇宙ステーションは「フリーダム」と呼ばれ、20世紀中に完成することが目標だったはずなのですが、ロシアの途中参加や参加各国の予算縮小などのあおりを受けて、未だに完成していないのが現状です(現在の完成目標は2008年)。完成前に老朽化するとは、なんとも皮肉なことだと言えるでしょう。

(2003/12/07 追記)
 今度は宇宙ステーションの姿勢制御装置に異常が見つかったそうです。本文の衝撃音とは関係なさそうですが、確実に老朽化が進んでますねえ。本当に完成するまでもつのでしょうか?

(2004/01/07 追記)
 今度は宇宙ステーションで原因不明の気圧低下が発生しているそうです。少し前には、生命維持系統が故障する事故もあったとのことで、ここまで来ると本気で中の人の安全が心配になってきますね。

2003/11/19

チェス名人と人工知能との勝負は引き分け 

<人工知能> 世界一のチェス名人ゲイリー・カスパロフ氏が、音声認識やバーチャルリアリティ機能を備えたコンピューター「X3D フリッツ」との4本勝負を行った結果、最終的に1勝1敗2分けの引き分けで決着となりました。
 もはや恒例となった感のあるカスパロフ氏と人工知能とのチェス対決ですが、今回は新趣向としてバーチャルリアリティ技術が導入されました。具体的には、実際にチェス盤上の駒を動かすのではなく、カスパロフ氏は黒い3Dメガネをかけてコンピューターモニターの前に座り、目の前に浮いて見える画面上のチェス盤の画像と対峙するのです。一般のチェスの試合と異なるところはそれだけでなく、カスパロフ氏は音声認識プログラムを使用して駒の動きを指示しました。カスパロフ氏はこの新技術に手を焼くものと予想されましたが、予想に反してこれらの技術をうまく使いこなし、コンピューターと互角に戦えることを証明しました。
 最後に、これまでのカスパロフ氏の戦歴を簡単に振り返ってみましょう。同氏は1996年と1997年にIBMのスーパーコンピューター「ディープブルー」(ディープブルーはIBMの俗称)と戦い、人間がチェスで人工知能に初めて敗北を喫したことによって一躍話題になりました。その後も、進歩するコンピューターと氏との戦いは続き、今年の2月にはコンピューターチェスの世界王者「ディープジュニア」とニューヨークで6連戦を行い、3対3で引き分けています。カスパロフ氏の弁によれば、「マシンは良くなっているが、われわれ人間も学習を積んでいる。今、私は(ディープブルーに破れた)6年前よりもコンピューターについてずっとよく知っている。」とのことで、今後も人間とコンピューターの知恵比べは続いていくのでしょう。

2003/11/17

傍受不可能な量子暗号製品が初めて市販される 

<応用物理学・情報通信> 米国の新興企業マジック・テクノロジーズ社は、量子暗号技術を用いた通信装置を出荷開始しました。こうした製品が市販されるのは世界で初めてだとしています。ちなみに、価格は5万〜10万ドル。この製品は量子暗号技術と従来型の暗号技術を組み合わせ、あらゆる種類の情報漏洩に対して完全に安全な光ファイバーネットワークを提供すると同社は説明しています。
 量子暗号とは、量子力学の基本原理を応用した暗号の一種で、理論上は絶対に傍受することができない(傍受すると必ずバレてしまう)とされています。現在の暗号技術は、解読が成功するまでにかかる時間を非常に長くすることで、事実上解読を不可能にするというアプローチを取っていますが、量子暗号の場合は、通信を傍受できないために解読そのものが不可能であるという大きな違いがあります。
 それでは、傍受を不可能にする量子力学の基本原理とはなんでしょうか。それは、量子(この場合は光子)を観測すると、観測したことそれ自体によって量子の状態が変化してしまうという「ハイゼンベルクの不確定性原理」と呼ばれるものです。つまり、量子暗号の通信を途中で傍受しようとすると、傍受したことによって通信内容が変化してしまい、その変化から通信している人間は傍受された事実を知ることができます。これでは気づかれずに通信を傍受することができません。したがって、安全な通信ができると保証できるのです。
 まだまだ個人で買うには製品の値段が高いようですが、今後電子商取引の普及などにより、ますます安全な通信環境が求められるようになるにつれて、量子暗号を使用した通信が増えていくのは間違いないでしょう。

2003/11/14

ウイルスの人工的な合成に成功 人は神になれるか? 

<生物工学> 米国にあるバイオロジカル・エナジー・オルタナティブズ研究所の科学者グループが、細菌に感染して増殖するファージと呼ばれるウイルスの人工的な合成に成功しました。会見に同席したエイブラハム・エネルギー長官は、将来、人工的に作り出した微生物を使って、大気から二酸化炭素を吸収したり、水素を作り出したりするなど、環境やエネルギー面の改善に役立つ技術につながる「重要な科学的前進」と評価しています。
 今回の研究に携わったのは、人間の全遺伝情報(ヒトゲノム)の解読で有名になったクレイグ・ベンター氏率いる科学者らで、遺伝子情報を基に、わずか14日間で5000以上の塩基を組み合わせ、ファージを合成したということです。
 今回の成功で、人類は自由に生命を作り出せるようになったのでしょうか? 答えは微妙です。そもそも生命の定義自体があいまいなのですが、ここでは仮に自己複製(増殖)と進化の能力を持った有機物と定義しましょう(他にも、外界との境界を持つとか、エネルギーの交換を行うといった定義があります)。進化のほうは問題ありませんが、ウイルスは細菌と異なり、自力で自己複製することができません。必ず他の細胞に寄生して、その細胞の自己複製能力を利用しなければ増殖することができないのです。そういう観点から、ウイルスはしばしば半生物という呼ばれ方をします。また、ウイルスは細菌と比べて、大きさが極めて小さく、構造も単純であるという違いがあります。
 そういう意味では、今回の成功によって、人類は自由に半生物を作り出せるようになったとは言えるでしょう。これは十分に偉大な科学技術の進歩です。おそらく、いずれ人は細菌も自由に合成できるようになるでしょう。生命の創造。これは、かつて神だけがなしえると考えられていた領域への挑戦なのです。

2003/11/13

火星に川が存在した決定的な証拠を発見 

<惑星科学> 米航空宇宙局(NASA)が、10億年以上前の火星に川が流れていたことを示す決定的な地形を発見したと発表しました。今回の発見は、火星探査機マーズ・グローバル・サーベイヤーの観測によって、三角州(さんかくす)と考えられる地形が見つかったもので、太古の火星には川のほかに湖もあったことをうかがわせるといいます。
 三角州は、火星の南半球にある直径約64キロのクレーターの内部にありました。長さ約13キロ、幅約11キロの扇型に堆積した地形の上には、水の流れでできたとみられる曲がりくねった跡が多数残っていました。今回の発見を受けて、NASAの火星探査計画主任科学者のジム・ガービン博士は「火星表面に長い期間、水が存在していたことを示す決定的な証拠」であるとし、サーベイヤーが撮影した画像データを分析した担当者も同様に、「川が湖に流れ込むところにできた三角州とみられる」と指摘しています。
 太古の火星に液体の水が存在していたとする説は特に新しいものではなく、いわば学界の定説となっています。しかし、その規模に関しては専門家の間でも意見が分かれており、隕石の衝突に伴う一時的な洪水程度のものであったとする説から、火星の表面を覆う大海が存在したとする説まで様々です。現在、多くの火星探査機が火星を調査していますが、その大きな目的のひとつは火星に水が存在した証拠を確認し、この論争に決着をつけることにあります。
 ではどうして、科学者はそんなに火星の水にこだわるのでしょうか。その理由とは、長期間安定して液体の水が存在することが、地球型生命の生存に欠かせない要素だとみなされているからです。つまり、太古の火星に川や湖が存在したのであれば、そこで生命が誕生し、進化を遂げていた可能性が出てくるのです。念のため注意しておきますが、ここで問題にしている生命とは、地球外知的生命体(いわゆる宇宙人)ではありません。たとえ細菌などの微生物であっても、地球とは独立して誕生した立派な生命体なのです。
 だからといって、がっかりしないでください。もし、火星という地球にきわめて近い環境で生命が誕生していたとすれば、銀河系の中にある無数の星々の中でも、同様に生命が誕生している可能性は極めて高いでしょう。もしそうなら、中には人類と同じレベルまで進化を遂げた知的生命体が誕生していてもおかしくありません。銀河系に知的生命体が存在するか否かは、それ自体が大きな科学論争ですので、今回は詳しく触れないでおきます。しかし、火星に安定して水が存在したとなれば、知的生命体が存在する可能性が高くなることは間違いありません。

薬を運ぶ超微細粒子 ナノテクとバイオの関係 

<医学・ナノテク> 産業技術総合研究所と大阪大学の研究グループが、病気で炎症を起こしている部位に薬を効率的に運ぶナノ粒子の作製に世界で初めて成功しました。目に炎症を起こしたマウスにこのナノ粒子を注射したところ、炎症部位だけに取り込まれることを実証したとのことで、同研究所は通常の炎症だけでなく、リウマチ、アルツハイマー病などの治療にも応用可能としています。
 念のために補足しておきますと、ナノというのは「10億分の1」を表す言葉で、ここでは長さの単位として使っています。だいたい砂糖の分子の大きさが1ナノメートル、水素原子の大きさが10分の1ナノメートルだと思ってください。もちろん、肉眼で見える大きさではありません。
 さて、開発されたナノ粒子は直径約100ナノメートル(つまり、1000万分の1メートル)。炎症部位近くの血管内側だけにあるタンパク質と結び付くように作られていて、ナノ粒子に薬を入れて利用すると、患部に集中的に薬を運ぶことができる原理なのだそうです。
 ところで、皆さんも最近どこかで「ナノテクノロジー」(通称ナノテク)という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。ここ数年間で急速に成長してきた科学技術の分野のことで、ナノメートルのサイズのものを扱う技術の総称です。今回開発されたナノ粒子も、そうしたナノテクのひとつということになります。
 ナノテクには様々な応用分野が考えられていますが、バイオテクノロジーとの融合もその一つです。今回のナノ粒子は「ドラッグ・デリバリー」と呼ばれるバイオテクノロジーの一分野で、医薬品を必要な患部だけにピンポイントで送り届ける技術に相当します。この技術の優れている点は、従来の投薬と比べて治療効果を大幅に高め、同時に副作用を減らせる点にあります。従来は病気と関係のない場所にまで薬が届いてしまい、薬の効き目が分散してしまったり、余計な効果を発揮してしまったりしていましたが、ドラッグ・デリバリーでは、こうした問題点を一挙に解決することができるのです。
 ナノテクとバイオを組み合わせる試みは他にも行われています。たとえば、DNAなどの微量な生体分子を高速に解析する装置の開発や、液晶の替わりになる膜構造の材料を人工細胞で作るといった研究です。一見、関係なさそうな分野に見えますが、案外ナノテクとバイオの関係は親密なのです。

(2003/12/09 追記)
 ナノサイズの粒子で血液中の毒素を除去する新しい治療法が開発されています。この粒子を血液中に注入すると、体内を循環しながら毒素を拾い上げていき、最後は磁石を使って体内から粒子ごと毒素を取り除くことができるのだそうです。血液透析の代わりになる治療法としても期待されています。

2003/11/10

パソコン9割引セール? 電子商取引の落とし穴 

<コンピュータ> 大手商社「丸紅」が運営するインターネットのショッピングサイトで、パソコンの価格のケタを誤って、本来19万8000円とするところを、10分の1の1万9800円と表示してしまい、約1500台の注文が殺到するという事件が発生しました。情報筋によれば、某巨大掲示板で「激安パソコンが売られている」との噂が一気に広まり、一時はサイトの表示が不可能になるほどのアクセスが集中したそうです。
 その後、誤りに気付いた同社が、注文した約1000人にキャンセルを依頼するメールを送ったところ、当然のように「契約は成立している」、「丸紅を信用して買った」などの抗議が相次ぎ、やむなく表示通りの激安価格で販売することで決着しました。同社は損害額を明らかにしていませんが、単純計算で2億6700万円の損害になったと推測されています。
 専門の弁護士によれば、法律的には民法95条の「錯誤に基づく契約無効」に該当するそうで、厳密には丸紅側は契約を履行する義務はないはずなのですが、丸紅広報部は「契約無効に該当するとは思うが、会社の信用を重視した。圧力に屈したのではない」と話しています。いずれにせよ、単純ミスが膨大な損失を生み出したわけで、ボタンひとつで金銭が動く電子商取引の脆弱な一面をさらけ出したと言えるでしょう。
 かくいうわたしも、インターネット・ショッピングやインターネット・オークションを日常的に利用しています。今回の事件を他山の石として、買う側にせよ、売る側にせよ、金額は慎重に確認しなければならないと肝に銘じる必要があるようです。

(2003/11/20 追記)
 1万9800円でパソコンを大量に購入した人の一部が、インターネット・オークションを通じて、そのパソコンをそのまま高値で転売していたことが判明しました。商魂たくましいというか、買う方も買う方だというか、ちょっとしたお祭り騒ぎになっています。

2003/11/08

クローン人間禁止条約が採決先送りに 

<生物工学・科学倫理> 国連総会の法律委員会は、クローン人間づくりを禁止する国際条約の策定を促す決議案の採決を、2005年の国連総会まで見合わせることを可決しました。これは、国際社会の論議が尽くされるのを見守るよう求めたイランの主張を受け入れたものです。
 採決の内容は、賛成80、反対79の1票差。日本は賛成し、米国は反対。15カ国が棄権しました。委員会には、治療研究目的も含めクローン技術利用を全面禁止とする米国などの強硬案と、治療研究目的の利用を認めるかどうかは各国の判断に任せるという日本などの案の2つが提示されていました。
 さて、ここで私自身の立場を明確にしておきましょう。私は現時点ではクローン人間を作ることに反対ですが、研究・医療目的などで人間の細胞をクローン化することには賛成です。クローン人間を作ることに反対する理由は単純で、現時点では安全確実にクローン人間を作る手段が確立されていないからです。言い換えれば、現時点でクローン人間を作ろうとすることは、人体実験をするのと同じことなのです。これは医療倫理に反すると言わざるをえません。
 逆に、手段さえ確立されれば、クローン人間を作っても構わないと考えています。もちろん、クローン人間の人権が普通の人間と同等に保障されることが前提ですが。よく、クローン人間の存在は人間の尊厳を脅かすなどという議論を見かけますが、それはあたかもクローン人間を普通の人間と差別しているように聞こえます。クローン人間といっても試験管ベビーなどと同様に、誕生した手段が違うだけで同じ人間なのですから、その存在を否定することは歴史の流れに逆行することなのではないでしょうか。
 一方で、人間の細胞をクローン化すること自体は、基礎研究・臨床医療などの分野で非常に多くの有用な応用が考えられています。たとえば、病気や事故で失われた組織・器官(皮膚や内臓)を再生する「再生医療」、患者一人一人の体質に合った治療手段を提供する「オーダーメイド医療」、マウスなどの実験動物より実際の人間に近い環境で行われる新薬試験などなど、数え上げればきりがありません。
 私は、一般に宗教に対する関心が薄いといわれる日本でこそ、余計な先入観にとらわれずに、これらの応用分野を発展させることができると考えています。私の考えを押し付けるつもりはありませんが、皆さんもクローンについて一度考えてみてください。

(2003/11/14 追記)
 「日経サイエンス 2002年2月号」で、「再生医療」と人間のクローン細胞の関係が詳しく解説されています。わかりやすい記事ですので、興味のある方はぜひご一読ください。

(2003/11/28 追記)
 我が国の総合科学技術会議でも、再生医療の研究のためにヒトクローン胚(クローン人間の初期状態)づくりを解禁すべきだとの意見と、時期尚早とする慎重論の調整がつきませんでした。最終報告は両論併記になる模様です。

(2003/12/08 追記)
 一度は採決先送りになったクローン人間禁止条約ですが、ここへ来て条約案の採決を強行する動きが出てきたようです。恐らく可決の見込みはないと見られていますが、楽観視はできません。

(2003/12/10 追記)
 結局、議論は国連総会までもつれ込み、2年の延期という委員会の決定はくつがえされ、本会議によってクローン人間禁止条約の討議を来年の国連総会まで先送りすることに決定されました。委員会の決定が本会議でくつがえされるのは、極めて珍しいことだそうです。

(2004/01/18 追記)
 不妊治療としてのクローン人間づくりを提唱している元米ケンタッキー大学教授が、35歳の女性に体細胞クローン胚を移植したと発表しました。これが事実とすれば世界初のクローン人間が誕生する可能性があります。
 ただし、これまでも様々な個人・団体から同様の発表がなされていますが、実際にクローン人間づくりに成功した例は一つもありません。今回も、客観的に検証できる証拠は示されていないようです。

2003/11/07

どこでもキーボード 来春にも発売予定 

<コンピュータ> それほど新しいニュースではないのですが、友人から情報提供があったので、面白いコンピュータ入力装置をご紹介します。ご紹介するのは、平らな面ならどこでもキーボードにしてしまう装置で、小さなキーを押さなければならない携帯情報端末や携帯電話への応用が期待されています。
 キーボードの大きさはデスクトップ型のパソコンとほぼ同じ大きさで、装置に実装された赤色のレーザーで机上にキーボードの画像を投影し、画像上のキーに触れると赤外線センサーがどのキーに触れたかを感知して、文字を入力する仕組みになっています。
 この入力装置を使うには平らな面を確保しなければならないので、立ったままや歩きながら使う携帯機器に応用するのは個人的に難しいと思うのですが、想定している価格は2万円から3万円ということで、結構普及は早いかもしれません。
 ついでなので、もうひとつ面白い装置をご紹介しましょう。今度は平らな面ならなんでもスピーカーに変えてしまうという装置です。原理は非常に簡単で、コンピュータのマウスくらいの大きさの装置を平面に固定すると、そこから振動が伝わって音が発生するというしろものです。平らで密度の高い材質を使った面なら、振動させるのは机でも窓でも構いません。部屋の窓が全部サラウンド・スピーカーに変わる日も近いかもしれませんね。

2003/11/05

観測史上最古の銀河発見される 

<天文学> ハワイのマウナケア山頂にある国立天文台の大型望遠鏡「すばる」が、128億4千年前という、観測史上最古の銀河を発見しました。これは我々の住む宇宙が、少なくとも128億年の年齢を持っていることを意味します。
 現代の天文学においては、観測史上最古という記録はどんどん更新されていきます。実際「すばる」が観測したものだけでも、これまでに128億年前の古い銀河が9個もあり、今回の発見で古い銀河の発見記録上位10位のうち9個を独占することになりました。ですから、今回の発見も遠からずさらに古い銀河の発見によって更新されるでしょう。それではなぜ今回このニュースを取り上げたのかというと、宇宙の最果てにある銀河の観測と、それがもたらす情報について、一度まとめて紹介しておきたかったからです。
 そもそも宇宙の果てにある銀河までの距離をどうやって測るのでしょうか。太陽から近い星ならば三角測量(一年の間で星が見える角度がどれだけ変わったかを測って、その角度から距離を求める方法)が使えますが、遠くの天体では角度が小さくなりすぎて、この方法では観測できません。遠くの天体までの距離を測る方法はいろいろありますが、現在最も遠くにある天体までの距離を測るのに使われている方法は、その天体が遠ざかる速度を測って、そこから算定する方法です。
 なぜ、天体の遠ざかる速度から、その天体までの距離が分かるのでしょうか。これを説明するためには、まず我々の住む宇宙が現在もなお膨張し続けているということを思い出す必要があります。いわゆるビッグバン理論によれば、この宇宙はもともと極小の一点から始まり、急激に膨張して現在の状態になったとされています。そして、その膨張は今でも続いています。すなわち天体同士の距離は互いにどんどん離れて行っているのです。
 さて、次に説明しなければならないのは、速度と距離の関係です。実は、宇宙の天体は互いに遠くにあるものほど速い速度で離れて行っています。イメージとしては、ゴム風船にいくつかの点(天体のつもり)を書いて、風船を膨らませたところを想像してください。風船上で遠くにある点ほど、速い速度で離れて行くところがイメージできるでしょうか。すなわち、天体が離れて行く速度が分かれば、その天体までの距離が算出できるのです。この法則は、発見者の名前を取って「ハッブルの法則」と呼ばれます(あの「ハッブル宇宙望遠鏡」のハッブルさんです)。
 そして次に必要になるのが、天体が離れていく速度を測る方法です。これには「赤方偏移」(レッド・シフト)と呼ばれる現象を用います。これは単純に言うと、近づいてくる救急車のサイレンは甲高く聞こえ、遠ざかるときには逆に間延びして聞こえる現象の光バージョンです。音も光も同じ波の性質を持っていますが、波は観測者との速度によってその波長(音の場合は音の高さ、光の場合は光の色)が変化します。そう、学校の物理学の授業で習った「ドップラー効果」というやつです。これを遠くの天体の場合に当てはめると、速い速度で離れていく天体ほど、その色が赤の方に変化することになります。これが「赤方偏移」です。すなわち、その程度を測定することによって、天体が離れて行く速度、すなわち天体までの距離を知ることができるのです。
 さて、前置きが長くなってしまいました。それでは遠くの銀河までの距離が分かると、他に何が分かるのでしょうか。一番大きな成果は、現代科学の大きなテーマのひとつである、宇宙の年齢を推定できることです。宇宙の年齢の推定方法には様々なものがありますが、一番確実なのは、宇宙が誕生した直後にできた天体を観測することです。宇宙より古い天体があるはずはないですから、少なくともその天体の年齢よりも宇宙は年寄りだということが分かるのです。
 ここでちょっと首をひねった方がいるかもしれません。どうして、距離が分かると年齢が分かるのでしょうか。それはこういう理屈です。128億光年離れた距離にある銀河から地球に光が届くには128億年かかります。なぜなら、1光年という距離は、光が1年かかって進む距離なのですから。つまり、今観測している128億光年離れた銀河は、128億年前にそこに存在していた銀河だということになります。言い換えれば、我々は128億年前の銀河の姿を見ていることになるのです。このことから、遠くにある銀河を観測することで、時間を遡って宇宙ができた直後の様子を知ることができることもわかります。
 宇宙の最果てにある銀河は、時間の最果てにある銀河でもあるのです。

(2004/02/16 追記)
 予想通り記録が更新される時がやってきました。カリフォルニア工科大学の研究グループが地球から約130億光年離れた銀河を発見したのです。
 宇宙の年齢は約137億年とされており、誕生後7-10億年くらいまでは、星や銀河から光が発せられても周囲のガスに吸収される「暗黒時代」が続いたと考えられています。そのため、今回見つかった銀河は「暗黒時代」の終了直前、誕生から7億5000万年の宇宙の姿を現していることになります。
 研究グループは、ハッブル宇宙望遠鏡と、日本の「すばる」望遠鏡と同じハワイ・マウナケア山頂にあるケック望遠鏡を使いました。一般相対性理論にもとづき、巨大な重力の銀河団が周囲の空間をゆがめて、レンズのように後ろの天体を大きく見せる「重力レンズ」現象を活用して、天の川銀河の50分の1しかない非常に暗く小さい銀河の観測に成功したのです。

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