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〜科学にロマンを、ロマンに科学を SFと科学の接点を探求する〜

2004/01/28

生体エネルギーを人工的に合成することに成功 

<生物工学> 浜松ホトニクス筑波研究所の研究員らが、あらゆる生物の細胞の中で、生命活動のために必要なエネルギー源として利用されている物質「アデノシン3リン酸」(ATP)を、人工的に合成することに世界で初めて成功しました。
 この物質「ATP」は、モーターのように回転する酵素によって生み出されますが、研究員らは酵素を磁石で人為的に回転させることによってATPを人工的に合成することに成功しました。今回の発見は超微小な分子サイズの機械を作る際、エネルギー生産装置として応用できると期待されています。
 最初に、ATPは生命活動のために必要なエネルギー源と書きましたが、これは決して誇張ではなく、生物が生命活動(筋肉を収縮させたり、化学物質を合成・分解したり、ホタル等が光を発したり)全般を行う上で必要なほとんどあらゆる化学反応には、この化学物質が必要とされています。
 言い換えれば、生物は外界から摂取したエネルギーをいったんATPという物質に変換して保存し、必要に応じてそのエネルギーを取り出して生命活動を行っているとも言えます。この性質から、しばしばATPは生物内における、エネルギーの「通貨」(お金)の役割をしていると説明されます。
 人間を含む動物の場合は、食べ物を酸素によって分解することでATPを生産していますし、植物の場合は光合成によってATPを生産しています。このように、ATPという物質は、生物の種類を問わず、普遍的なエネルギー源として生命活動に深く関わっています。
 逆に、このATPの存在を調べることによって、生命活動の有無を調べたり(SF的に言えば、生命探知センサー)、ATPを利用して超小型のモーターを動かしたりすることもできます。
 今回、ATPが人工的に合成できるようになったことで、この分野の研究がさらに進むことになるでしょう。



2004/01/24

火星探査車2台目も着陸成功 

<惑星探査> 先日、火星への着陸に成功した火星探査車「スピリット」の同型機「オポチュニティ」が、先程火星表面への着陸に成功しました。同型機ですので、着陸の方法や性能などはスピリットと同様です。詳しくは、2004/01/04の記事「NASAの火星探査車が着陸に成功 水と生命の痕跡を探る」をご覧ください。
 同記事は追加情報が多すぎて長くなってしまいましたので、今後の情報はこの記事の下に追加していきます。
 信号が到着した瞬間、管制室は一層大きな拍手と歓声に包まれ、あちこちで抱き合う科学者や技術者の姿がみられました。管制室には、カリフォルニア州知事のアーノルド・シュワルツェネッガー氏も訪れて、技術者たちと握手をしながら成功を祝福していました。探査機は、着陸後15分以上にもわたって、火星表面を極めてゆっくりと転がっていましたが、これは着陸点のメリディアニ平原が非常に平らだからです。
 スピリットは不慮の事故によって、現在、機能不全に陥っています。そのため、2号機であるオポチュニティへの期待は高くなっています。今後の成果に期待しましょう。

(2004/01/25 追記)
 宇宙開発事業団(NASDA)のサイトでは、本ミッションの詳細な情報が提供されています。ぜひご覧ください。

(2004/01/28 追記)
 オポチュニティのエネルギーが異常に消費される現象が起きており、NASAのJPLでは科学者グループが対応に追われています。地球からの指示を受けていないのにヒーターが一晩中作動しており、これがエネルギーの異常消費の原因ではないかと考えられています。

(2004/02/02 追記)
 NASAは、通信障害を起こしていたスピリットが修復され、再び順調に作動を始めたと発表しました。
 スピリットが稼動を再開したことで、後から火星に到着したオポチュニティと合わせて2機の探査車が地球以外の惑星を同時に調査するという歴史上初めての出来事が実現しました。
 HOTWIRED Japan が、スピリットの復旧に苦心した技術者へのインタビューを掲載しています。

(2004/02/23 追記)
 NASAは火星探査に関するウェブサイトが大人気で、過去1カ月半の間に、ウェブサイトへのアクセス総数が、地球上の総人口を超えたと発表しました。

(2004/03/15 追記)
 日経サイエンス2004年3月号では、米探査機火星着陸を詳しく取り上げています。興味のある方はご覧ください。

(2004/03/17 追記)
 オポチュニティーが、火星から見た「日食」を史上初めて観測しました。
 地球から見える日食は、月が太陽の前を横切ることで起きます。今回観測された日食は、火星の月(衛星)であるダイモスとフォボスが太陽の前を横切るのを、火星から観測したものです。
 正確には、衛星の影は太陽を完全に覆い隠せるほど大きくなかったので、「日食」というより「太陽面通過」と言った方が適切かもしれません。







2004/01/14

数ヶ月先の地震予知に成功 

<地球科学・災害対策> カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究グループの成果によると、近い将来に、地震学者が数ヵ月先の地震を予知できるようになるということです。研究グループは、新たに開発された手法を用いて、昨年カリフォルニア州と日本で発生した複数の大きな地震を、高い精度で予知しました。予知された地震の中には、昨年12月にカリフォルニア州を襲ったマグニチュード6.5の地震や、昨年9月に北海道を襲ったマグニチュード8以上の十勝沖地震も含まれています。
 今回発表された新たな手法は、大きな地震の前に起きることが多い震動の小規模な連鎖を考慮に入れる点で、従来の手法と異なる画期的なものだそうです。ある地域で小さな地震が多発していることが明らかになった場合、研究グループは、その地域の過去を分析して、様々な地震のパターンを探します。そして、同様のパターンが他の時代にも見つかったときに今後9ヵ月の地震について予知を発表します。
 この新たな手法を使っても、将来起きる地震の正確な日時までを特定することは、まだできませんが、研究者たちは予知の範囲を数ヵ月間にまで絞ることは可能になったとしています。
 たとえば昨年6月、研究グループは、以後9ヵ月以内にマグニチュード6.4規模の地震がカリフォルニア州中部を襲うとの予知を発表しました。まさしく、その地域でマグニチュード6.5の地震が起きたのは、予知から半年後の12月22日でした。同チームはまた2003年7月、日本北部についても同様に、9ヵ月以内にマグニチュード7以上の地震が起きると予知しました。その後、9月26日にマグニチュード8を超える地震が十勝沖で発生しました。なお、どちらの地域でも、このような大規模の地震は長期間観測されていませんでした。
 短期間の正確な地震予知は、かねてから地震学の究極の目標とされてきました。しかし、過去20年にわたる研究成果は芳しくなく、多くの研究者は研究対象を他の分野へ移していきました。そのため、今回の新しい成果について、懐疑的な態度を取る地震学者もいます。
 研究グループは、自分たちの研究が、今後のさらなる進歩によって、地震予知は可能だということを証明する一助になることを望んでいます。また、地震が予知できれば、事前に緊急対応の準備ができるようになることも期待しています。
 現在はパニックや経済的な損失を招く恐れから、研究グループは、予知を事前に公表することを控えています。しかし、人があまり住んでいないカリフォルニア州南部のモハーベ砂漠南部で、今年の9月5日までにマグニチュード6.4規模の地震が発生する可能性があるため、注目しているとのことです。







2004/01/11

災害救助用大型ロボットが登場 まるでアニメのよう 

<ロボット> ロボット開発を本業とするベンチャー企業テムザックが開発した、災害現場で活動するレスキューロボット「T52援竜」が、北九州市の消防出初め式で初公開されました。
 高さ約3.45メートル、重量約5トンは世界最大級の大きさ。「おそらく世界初」という、中に人が乗り込む方式で、2本のレバーで操縦され、動く様子はまるでアニメのようだそうです。無線で遠隔操縦もでき、危険な場所での作業も可能になっています。
 この形状で「アニメのよう」と言われると、わたしが真っ先に思い出すのは、アニメや漫画のメディアミックスで名を馳せた「機動警察パトレイバー」という作品です。この作品の設定は、土木作業用の大型ロボット「レイバー」が急速に普及したことから「レイバー犯罪」が増大し、警視庁に警察活動用レイバー通称「パトレイバー」が導入されるという筋書きになっています。今回発表されたロボットは、まさに作品中のレイバーにそっくりです。
 ちなみに、よりいっそうアニメらしいロボットとしては、「HRP-2 Promet」(プロメテ)という人型ロボットが開発されています。その容姿は一見の価値あり。なにせ、プロのメカデザイナー出渕裕氏がデザインを担当しているのですから。彼は前述のパトレイバーのデザイナーとしても有名です。というより、このロボットはパトレイバーそのものです。
 このアニメ型ロボット、開発元は川田工業株式会社ですが、その研究開発には経済産業省系列の独立行政法人、産業総合研究所が深く関わっているという、いわくつきの代物です。

(2004/01/14 追記)
 アニメのようなロボットが、また登場しました。バンダイは「ドラえもん」の対話型ロボットを開発、3月下旬から販売すると発表しました。人の呼び掛けを認識し、声優の大山のぶ代さんの声で約750の言葉を話し、四次元ポケットも装備しているそうです。価格は約2万円と、おもちゃに毛が生えた程度のものです。
 しかし、これを馬鹿にしてはいけません。現在、バンダイでは、2010年までに本物のドラえもんを作るプロジェクトを進めており、今回の製品は本物に向けた第1号機という位置づけになっているのです。

(2004/02/23 追記)
 海外の企業がまさに「レイバー」という土木作業用多脚型ロボットを販売しています。写真をクリックして拡大すると大迫力。





2004/01/09

人工的に細胞を作ることに成功 タンパク質の合成も可能 

<生物工学> 京都大学などの共同研究チームが、内部に遺伝子を持ち、タンパク質を合成する本格的な人工細胞を作成することに成功しました。
 生物の細胞の中では、遺伝子の情報を元にタンパク質の合成が行われ、その連鎖によって複雑な生命機能が働いています。人工細胞は、その制御メカニズムなど、生命の謎を解明する手掛かりになると考えられています。また、人間の体内で有用なタンパク質を合成する、薬としての応用も期待されています。
 今回作成された人工細胞の大きさは、直径0.01ミリメートル(10マイクロメートル)と、本物の細胞と同様の大きさですが、作成方法によって、数10ナノメートル(0.01マイクロメートル)から0.1ミリメートル(100マイクロメートル)まで、好きな大きさにすることができるそうです。
 人工細胞の作成方法は、まず、試験管の中に細胞膜と同じ脂質でできた薄い膜が重なった層を作り、これに具となるアミノ酸やDNA、遺伝情報解読に必要なRNA合成酵素、大腸菌のタンパク質合成器官「リボソーム」などを加え、37度に保温して、24時間ほど煮込みます。すると、脂質膜は「自己組織化」という現象を起こして自発的に変形し、DNAなどの具を内部に取り込んで、球形の人工細胞が出来上がります。後はおいしく召し上がれ。
 今回は材料として、クラゲから採った蛍光タンパク質の遺伝子を含むDNAが使用されましたが、人工細胞の中では、蛍光タンパク質の合成が効率的に進み、膜に包まれない状態に比べて、タンパク質濃度は10倍も高くなりました。研究チームの次の目標は内部でタンパク質合成が効率的に進む理由を解明することだそうです。
 ここで分子生物学の基礎をおさらいしておきましょう。通常の(真核生物の)細胞では、細胞内の核と呼ばれる場所にある染色体に遺伝情報(遺伝子)が格納されています。この染色体の実体は、DNAと呼ばれる二重螺旋状の分子の鎖で、4種類の分子がちょうど文字のように組み合わされて、意味のある情報を記録しています。この情報こそ、我々と他の生物を違う姿形にしている部分であり、また、生命活動をつかさどっている部分そのものでもあります。
 しかし、DNAはそれ自体が直接働いて生命活動を行うわけではありません。DNAの情報に基づいて組み立てられたタンパク質が、ある特定の生命活動に対応する化学反応を促進する酵素(触媒)として作用することによって、はじめてDNAは生命活動に関わることが出来ます。すなわち、「DNA→タンパク質(酵素)→化学反応→生命活動」という流れがあるわけです。
 実際には、タンパク質はさらに細かいアミノ酸の組み合わせによって合成されますが、この説明では省きます。遺伝子とタンパク質の関係については、「遺伝子の部屋」というサイトで、わかりやすく説明されていますので、詳しくはそちらをご覧ください。
 さて、今回人工的に作成された細胞は、上に述べた一連の流れをすべて行うことができる、一種の「生物」であると言えます。人間などの複雑な生物の中で行われている生命活動は、単一のタンパク質だけによって成り立っていることはまずなく、複数のタンパク質が複雑に作用しあって、はじめてひとつの生命活動を構成しています。人工細胞では、この過程を詳しく研究することができるようになるわけです。遺伝子から作られるタンパク質がどのように組み合わさって働くかという研究は、プロテオミクスと呼ばれ、現在の生物学において最も熱心に研究が進められている分野のひとつです。
 また、体の中で特定のタンパク質が働かなくなった場合、そのタンパク質によって支えられていた生命活動が正常に行われなくなります。すなわち、病気になってしまうわけです。したがって、体内の適切な場所に必要なタンパク質を与えてやれば(または不要なタンパク質を取り除いてやれば)、病気を治すことができます。これが人工細胞の薬としての応用です。
 このように、人工細胞には無数の可能性があります。「生物」を人工的に合成することに成功したという意味では、人類は「神」に半歩近づいたとも言えます。あとは、生命の「設計」(DNA配列の一からのデザイン)ができれば、人類は創物主にさえなれるでしょう。







2004/01/08

米国が月面基地建設・有人火星探査を計画 

<宇宙開発・科学政策> 2003/12/06の記事「米国が有人月面探査を再開? 科学と政治の微妙な関係」において、すでに一度取り上げていますが、ブッシュ米大統領は日本時間1月15日朝、米航空宇宙局(NASA)本部で演説を行い、新たな宇宙開発計画を発表しました。
 この計画は月面への宇宙基地の建設や、火星の有人宇宙探査などを視野に入れた画期的なものです。それによると、早ければ2015年、遅くとも2020年までに、再度宇宙飛行士を月に送って、月面基地を建設。これを足掛かりにその後、人間を火星に送るとのことです。
 NASAは以前から、核融合発電の原料となるヘリウム3の採取や、地球に衝突する可能性のある小惑星の探知、火星有人探査に向けた訓練などのために、月面基地の建設を検討してきましたが、これまでは予算の裏付けがなく構想段階にとどまっていました。
 新計画では、現在のスペースシャトルを10年で退役させ、多目的の新型有人宇宙船を開発することも想定しています。新型の宇宙船は「乗員探査ビークル」(CEV)と呼ばれ、国際宇宙ステーションに乗組員を運ぶだけでなく、月面着陸も可能とし、加えて将来的には火星への有人探査計画にも利用できるようにする模様です。
 早ければ2007年にも、無人の実験機でテスト飛行を実施し、2013年をめどに、有人での月面着陸を目指すとのことです。なお、現在のスペースシャトルは、NASAやロシアが、国際宇宙ステーションの建設を完了し次第、順次退役させる予定です。
 ブッシュ大統領は、1961年に「我々は月に行く」と演説し、アポロ計画を実現させるきっかけを作ったケネディ大統領の再現を狙っているとも考えられます。しかし、新たな計画は膨大な予算が必要となるため、一部の専門家からは、「大統領選挙に向けた話題作りにすぎない」、「他の科学技術予算を圧迫する」との批判も出ています。
 この計画が実現すれば、人類の宇宙開発史に新たな1ページが加わるでしょう。ぜひ、選挙後も引き続きこの政策を推し進めてもらいたいものです。

(2004/01/16 追記)
 HOTWIRED JAPAN に本件に関する詳細な記事が出ています。ぜひご覧ください。

(2004/01/17 追記)
 HOTWIRED JAPAN に月面基地の歴史を辿る記事が出ています。ぜひご覧ください。

(2004/01/18 追記)
 スペースシャトルの退役に伴いハッブル宇宙望遠鏡も引退することになりました。ハッブル宇宙望遠鏡といえば、1990年に打ち上げられて以来、大気の影響を受けない宇宙空間で超遠距離にある天体を観測し、数々の新発見をもたらしてきたことで有名です。
 遠からず太陽系外惑星の発見を目指して別の宇宙望遠鏡が打ち上げられるのでしょうが、これまで長い間お疲れさまでした。

(2004/01/21 追記)
 HOTWIRED JAPANに、米国は月や火星を征服するつもりか?という記事と、新宇宙開発計画の真の目的はスペースシャトルと国際宇宙ステーション計画の廃止だという記事が掲載されています。非常に興味深いので、ぜひご覧ください。

(2004/01/29 追記)
 いよいよ日本政府も動き出しました。政府は、日本の宇宙開発利用政策を抜本的に見直す方針を固めたようです。
 失敗が続く国産ロケット打ち上げや、人工衛星の開発技術などの見直しのほか、これまで凍結していた日本人宇宙飛行士による独自の有人宇宙飛行についても、早期実現を視野に再検討するとのこと。政府の総合科学技術会議が新方針を今年夏にも策定することを決める模様です。

(2004/02/02 追記)
 米国は、国際協力で建設を進めている国際宇宙ステーションへの関与を取りやめることを検討していることが判明しました。NASAは同宇宙ステーションにおける研究を2016年9月末で中止する予定とのことです。
 撤退の理由は、ブッシュ米大統領が新宇宙政策で打ち出した、月面基地の建設や火星有人探査への資金を工面するためです。そもそも、この宇宙ステーション建設計画は米国主導で始まったものなのに、一方的に撤退するとはなんと勝手な国なのでしょうか。

(2004/02/16 追記)
 米国の科学者らが将来の火星有人探査に備えてユタ州の砂漠に建設した居住実験棟「火星砂漠研究基地(MDRS)」において、科学者、民間技術者ら6人の混成チームによる、2週間の滞在実験が始まりました。日本からも新聞記者が参加しています。
 MDRSは直径8メートルの2階建て円筒形カプセルで、発電装置や水の循環設備を備えています。滞在者は完全に外界から遮断され、疑似的な火星滞在生活を送ることになります。一帯は広大な岩石砂漠。寒冷で乾燥した気候と赤茶けた不毛の表土は、火星の峡谷地帯に似ており、米国で最も火星に近い環境と言われています。







2004/01/05

米国が入国者の指紋・写真照合システムを導入 

<プライバシー・個人認証> 9・11米国同時多発テロ以降、国内でのテロを恐れる米国が、ついにビザ(査証)を取得して米国に入国する全外国人訪問者の指紋と顔写真を、電子的にチェックするシステムの導入を開始しました。
 このシステムは「US-VISIT」と呼ばれ、米国を訪れるほぼ全員について、指紋のデジタルスキャンとデジタル写真撮影を義務付けるものです。最初の設備は、全米115の国際空港と14の主要港湾に導入されました。
 米国の入国管理当局は、このシステムがビザの不正使用やテロリストの入国、ビザ切れの不法滞在などの防止に役立つことを期待していますが、同時にプライバシーの侵害を懸念する声も上がっています。また、同制度の対象となるブラジルなどは、抗議の意味も込めて、米国からの訪問者の指紋を入国時に登録させ始めています。
 このシステムを技術的な側面から見ると、バイオメトリクス技術の応用ということになります。バイオメトリクスとは、これまでの暗証番号やICカードなどを使用した本人確認に代わる、強力な個人認証技術として古くから研究が進められてきたもので、個人に固有な身体的特徴を計測して本人確認を行う技術全般を指します。身体的な特徴としては、指紋、掌紋、声紋、顔、虹彩、筆跡、DNAなどが使用されます。SFではお馴染みの技術ですね。
 特に、顔を利用した個人認証の技術はここ数年の発展が著しく、今回の米国のシステムも顔認証技術を使用しています。プライバシーに関する顔認証の問題は、他の身体的特徴と異なり、本人が気づかない間に照合を行うことができる点にあります。例えば、ある建物に入るための通路に監視カメラを仕掛けておき、当人のあずかり知らぬ間にテロリストのデータベースと照合するようなことが、簡単にできてしまうのです。
 また、カメラといえば、治安の悪化が著しい日本でも、最近各地に防犯カメラを設置する動きが進んでいますが、これらの対策も一歩間違えば監視社会への一里塚になる危険を秘めています。技術はもう監視社会を実現させる一歩手前まで来ているのですから。

(2004/01/12 追記)
 米国が今度は、国内の航空会社に乗客の住所や電話番号などといった個人情報の提出を義務付け、乗客を「赤」や「黄」などリスクに応じて色分けするシステムの導入を検討中です。
 提供された個人情報は、大型のデータベースに照会され、「赤」ならば搭乗拒否、「黄」は要警戒、「緑」は通常検査の扱いになります。
 驚くべきことに、乗客の約5%が「赤」か「黄」に該当すると見られているそうです。

(2004/01/14 追記)
 スルガ銀行(沼津市)は、手のひらの静脈を読み取って本人確認する預金口座を、6月から取り扱うと発表しました。身体的な特徴を利用して本人確認をする「バイオメトリクス技術」を使った預金は、日本の銀行では初めてのこと。大手銀行では東京三菱銀行も検討しており、犯罪防止のために導入の動きが広がりそうです。

(2004/01/15 追記)
 ブラジル連邦警察は、入国する米国人に義務付けている、顔写真と指紋の登録に際して、反抗的態度を示したとして、米アメリカン航空の男性機長の身柄を拘束しました。
 この機長は、顔写真を撮影される際に右手の中指を立てて抗議の意思を示しました。連邦警察によれば、入国管理事務所で有罪となった場合、最高で2年の禁固刑に処されます。

(2004/01/19 追記)
 米ノースウエスト航空が、米政府が進めている航空機テロ防止プロジェクトのため、米航空宇宙局(NASA)の研究機関に乗客のデータを提供していたことが明らかになりました。
 米航空会社では、同様に、ジェットブルーが昨年9月に500万人分の乗客データを、同様のプロジェクトに取り組む軍関係の企業に提供していたことが発覚し、同社が謝罪しています。



2004/01/03

NASAの火星探査車が着陸に成功 水と生命の痕跡を探る 

<惑星探査> 米航空宇宙局(NASA)の無人火星探査車「スピリット」が、火星表面への軟着陸に成功しました。火星探査を指揮するNASAジェット推進研究所(JPL)が探査車からの信号を確認して、発表したものです。今月下旬には、同型の火星探査車「オポチュニティ」も火星着陸を予定しています。
 JPLによれば、火星探査車は火星の大気圏に突入した後、6分間の降下中にパラシュートを開き、逆噴射エンジンで減速した後、24個のエアバッグを膨らませて本体を覆い、衝撃に備えました。そして、地表に到達した際には、ボールのように数回バウンドし、約1キロの距離を転がりながら目標地点に着陸したとのことです。探査が可能な状態かどうかを確認するには、まだ時間がかかるとみられますが、早ければ24時間以内にも、火星で撮影した写真が地球に届くそうです。
 スピリットが着陸したのは、火星の赤道に近い「グセフ・クレーター」と呼ばれる場所です。このクレーターの周辺には、水の流入や流出を示す地形が見つかっており、かつて湖があった可能性があると考えられています。米探査機の火星着陸は、1976年のバイキングを始めとして、1997年のマーズ・パスファインダー以来、4機目となります。
 「マーズ・エクスプロレーション・ローバ」と呼ばれる無人火星探査車は、各種の分光器や試料採取装置などを備えています。今回のミッションの目的は、これらの機器によって火星表面の土壌などを分析し、火星の地質構造や鉱物組成などから、かつて火星に豊富に存在していたと考えられている水の手がかりや、その生存に水が不可欠な火星生命の痕跡を探索することです。火星の水と生命の関係については、2003/11/14の記事「火星に川が存在した決定的な証拠を発見」をご覧ください。
 火星探査関連では、昨年夏に火星が地球に大接近した機会を利用して、日米欧が相次いで探査機を送り込んでいました。しかし、幾重にも重なったトラブルのため、日本の火星探査機「のぞみ」は火星への軌道に入れず、昨年末に火星上空まで到達した欧州宇宙機関(ESA)の着陸探査機「ビーグル2」も、火星大気圏突入後に行方不明になるなど、事故が相次いでいました。
 それだけに、今回のNASAの無人火星探査車には期待が集まっており、NASAのオキーフ長官は着陸成功を確認すると、スタッフと抱き合って喜びを爆発させたそうです。記者会見で長官は、「パリから東京へホールインワンしたようなもの」と述べ、「今日はNASAにとって偉大な夜だ。我々は戻ってきた」と宣言しました。

(2004/01/05 追記)
 着陸から3時間後に、さっそく火星からの写真が届きました。これまでのところ、搭載されている機器に異常はなく、着陸は完全に成功した模様です。スピリットは、今後約1週間かけて観測機器の機能を確認した後、約3カ月間、周囲を走り回り、各種の分光器や試料採取装置などを使って岩石や土壌の組成を分析し、水や生命の痕跡を探ることになります。今後の成果に期待しましょう。

(2004/01/05 追記)
 米国の火星探査機着陸成功を受けて、中国と欧州が共同で進める「双星計画」の首席科学者が、中国も2020年までに火星に向けて探査機を打ち上げる計画があることを明らかにしました。ちなみに、同計画の最初となる地球観測衛星「探測1号」は、昨年12月30日に打ち上げに成功しています。一方、欧州宇宙機関(ESA)では、2029年に有人火星飛行を計画しています。これは新たな宇宙開発競争の幕開けなのでしょうか。

(2004/01/06 追記)
 JPLが火星探査の最新情報を提供する専用サイトを立ち上げました。また、HOTWIRED JAPANにも詳しい記事が掲載されています。ぜひご覧ください。

(2004/01/08 追記)
 スピリットから送信されてきたカラー写真が公開されました。火星の地表写真の中ではもっとも鮮明な写真で、水の浸食を思わせる角が丸くなった小石や、粘着力がありそうな土などが写っています。また、スピリットの着陸地点は、昨年2月のスペースシャトル「コロンビア号」の空中分解事故を追悼して、「コロンビア・メモリアル・ステーション」と名づけられました。

(2004/01/16 追記)
 ついに、スピリットが火星の大地に降り立ちました。これから生命を生むために必要な水の存在を確認する本格的な探査が始まります。
 今後、北東250メートルの地点にある、直径約200メートルの小クレーターを目指し、露出した岩石の成分分析や土壌の採取を行って、生物の誕生に必要な水の痕跡などを探ります。これまでの調査で、周辺からは水の存在を示唆する鉱物や、水の作用で形成された可能性のある土壌の堆積構造が見つかっており、精密探査の成果に期待が高まっています。

(2004/01/17 追記)
 NASAが随分気合の入った火星紹介サイトを公開しています。ぜひご覧ください。

(2004/01/20 追記)
 NASAはスピリットが初めて撮影した大型岩石に日本語の名前をつけました。中央にある幅数十センチの岩を「サシミ」、右の岩を「スシ」、一帯を「ワサビ地区」と命名したそうです。

(2004/01/21 追記)
 NASAがスピリットによる詳細な土壌分析結果を発表しました。着陸地点の土壌は大量のケイ素と鉄を含み、地球の海洋地殻やマントルの構成成分と似ているそうです。この発見は地球で火山や海底を作り出し、大陸を移動させているプレート活動が火星にも存在したことを示唆するとのことです。
 専門家の1人は「火星は、海と陸の地殻が完全に形作られる前の原始地球に近いかもしれない」と言っています。

(2004/01/22 追記)
 スピリットからのデータの送信が突然途絶し、24時間以上も意味のない信号だけが地球に届く、異常事態が発生しました! 現在、米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所(JPL)の科学者らが、交信再開を目指して原因究明を急いでいます。

(2004/01/24 追記)
 スピリットを管制しているNASAのJPLは、「スピリットは正常な状態にはほど遠く、機能の回復には短くても数週間はかかる」との見通しを明らかにしました。研究プロジェクトの代表者は、「スピリットは病人に例えれば重体といえる」と表現しています。
 まもなく、同型機の「オポチュニティ」が着陸する予定なので、そちらに期待しましょう。







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