〜科学にロマンを、ロマンに科学を SFと科学の接点を探求する〜

2003/09/30

忍び寄る電子タグの影 

<プライバシー> 共同通信の報道によると、NTT西日本と大日本印刷などは、今流行のICタグ(RFID)とブロードバンドを組み合わせて幼稚園児の位置を把握する実験を10月から始めると発表したそうです。
 ICタグとは、無線通信機能を備えた小型のICチップのことで、商品に接触することなしに物品の管理ができることから、これまで主に物流管理の世界で広く浸透してきました。まあ、早い話が非接触型のバーコードだと思ってください。
 今回のニュースで面白いのは、これを人間の管理に応用した点です。これまでにもPHSやGPSつき携帯電話などを用いて、子供や徘徊老人の位置管理を行うシステムはありましたが、ICタグの場合は身に着けるモノのサイズが飛躍的に小さくてすみます。なんといっても、最小のチップはこんなに小さいんですから。偽造防止のためにチケットや紙幣に埋め込もうという話もあるくらいです。ところが、そうなると今度は近い将来、社員証や携帯電話にICタグが埋め込まれて、自分が今いる場所を上司や政府に完全に把握される(しかも、行動記録が残る!)なんてことになるかもしれません。
 しかし、そこはIT先進国アメリカ。すでにそうしたプライバシーに対する規制を求める声があがっています。でも、9.11事件以降、プライバシーよりもセキュリティを求める傾向が強まっているアメリカですから、案外まっさきに人間に応用してしまうかも知れませんね。

(2003/12/04 追記)
 日立製作所は、ICタグの価格を1個当たり20円未満に低価格化できる超小型部品を来年4月から発売すると発表しました。日立が開発した非接触式ICタグ『ミューチップ」は、本文で取り上げたとおり、0.4ミリ角と世界最小クラスです。これが超低価格で製造できるようになるとすれば、一般社会への普及は非常に早くなるでしょう。

2003/09/26

巻頭言 

 今日、人類全体が共有する科学知識は質・量ともに増大の一途をたどっています。わたしはそんな現代科学を学ぶことを趣味にしていますが、そのなかでも特に、日常的な世界観を覆してくれる力を持った「SFっぽい科学」をこよなく愛しています。いくつか例を挙げるなら、宇宙論、素粒子物理学、バイオテクノロジー、ロボット工学などの分野が該当するでしょうか。このウェブログ(blog)では、そうしたエキサイティングな現代科学を、わたし自身のコメントを交えてわかりやすくご紹介していきたいと考えています。
 わたしは数年前にも、このウェブログと同じ趣旨のウェブサイトを開設していました。その名を『事象の地平線』と言います。ここ数年の間に、わたしは学生から社会人となり、それにともないサイトを更新する時間が十分に取れなくなってしまいました。そのため、現在では昔のサイトは閉鎖しています。しかし、このたびbloggerという、気が向いたときにあまり時間をかけず、好きなだけ情報を更新できるサービスがあることを知り、さっそく利用させていただくことにしたわけです。
 この blog の名前の由来は上に書いたとおりですが、科学的な側面からも多少補足しておきましょう。事象の地平線とは一般相対性理論の副産物で、ブラックホールとその外側の宇宙を隔てる境界のことです。ブラックホールに近づきすぎた物体はその巨大な重力に引かれて落下していきますが、物体が事象の地平線に近づくにつれて、その外側から観測している人にとっては、物体の中で流れている時間が限りなく遅くなっていくように見え、いつまでたってもブラックホールの中に落ち込まないという不思議な現象が発生します。一方、事象の地平線に到達した物体は、たとえ光の速度(宇宙で一番速い速度)をもってしても、もはやブラックホールの外に出ることはできません。このため、事象の地平線は「引き返し不可能点」(英語で Point of No Return)とも呼ばれます。これがこのウェブログの名前の由来です。

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